3月13日(日)、昭和11年に芝浦花柳界の見番(※)として建設された港区立伝統文化交流館(港区指定有形文化財)で「万葉イベント2022 in 東京」(港区文化芸術活動継続支援事業)を開催しました。
この企画はオンラインの万葉ロマン塾のスペシャル版です。色鮮やかな万葉衣装を身にまとい、歴史ある舞台の上で好きな万葉集の歌を自由に詠む。普段できない朗唱を雰囲気たっぷりに楽しんじゃおうというものです。
(※)「置屋」「料亭」「待合」からなる「三業」を取りまとめ、芸者の取次や遊興費の清算をする施設
講師は万葉ロマン塾でおなじみの高岡市万葉歴史館の関先生。新幹線に乗って、はるばる富山から来てくれました!
朗唱参加者は11名。ほとんどの方が万葉集の初心者です。そのため、4500首あまりある万葉集の中から自分の歌いたい歌を選ぶのは大変です。
そこで、歌いたい歌が具体的に決まっている方以外は歌いたい歌のテーマだけを前もって決めてもらい、それをもとに関先生に候補の歌をいくつか出してもらい、そこから選んでもらうというスタイルを取りました。(万葉衣装も好きな色を選んでもらいました)
イベントは万葉ロマン塾にも参加していただいたヴォイストレーナーの山岸典子さんによるヴォイストレーニングからスタート!緊張をほぐしてくれます。
その後、万葉ロマン塾の受講生を代表して、近藤悦代さん(写真上)と坂口陽子さんに3回にわたったオンライン講座の感想を話してもらいました。そして…いよいよ朗唱です。一部の方をご紹介します。
小渕光世さん 〔巻9:1791〕 遣唐使の母の歌
旅人の 宿りせむ野に 霜降らば 我が子羽ぐくめ 天の鶴群(あめのたずむら)
大意:たびびとが宿る野に霜が降りたら 空行く鶴の群れよ、我が子を羽で包んでおくれ
巻島大樹(この記事の執筆者)〔巻3:348〕 大伴旅人の「酒を讃むるの歌」の一つ
この世にし 楽しくあらば 来む世には 虫に鳥にも われはなりなむ
大意:生きている今を楽しく暮らせたら 来世は虫にだって鳥にだって私はなろう
ポテイニア イリイナさん 〔巻4:710〕 安都扉娘子(あとのとびらのをとめ)の歌
み空行く 月の光に ただ一目 相見し人の 夢にし見ゆる
大意:大空を渡る月の光で たった一目見ただけのあの人が 夢に見えました
新井美紀さん 〔巻3:378〕山部赤人が 故太上大臣藤原不比等の家の山池を詠んだ歌
いにしへの 古き堤は 年深み 池の渚に 水草生ひにけり
大意:古い堤は 年を経て 池のなぎさに水草が生えている
参加者の朗唱の後に関先生が歌の背景などを詳しく紹介されるので、全体としてとてもわかりやすい万葉集講座になりました。
最後は、会場にいる方全員で関先生が大伴家持の歌をアレンジしたオリジナルの歌「赤坂一会」を朗唱し、声高らかに締めくくりました。
赤坂一会
弥生立つ 春の初めに かくしつつ 相し笑みてば 時じけめやも
3月の春のはじめに こうやってみんなで笑えばいつでも楽しいだろう
万葉ロマン塾の受講生と赤坂一期一会プロジェクトのスタッフで記念写真。とてもいい交流の場となりました。
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